2023 年 59 巻 1 号 p. 61-66
症例は日齢0の男児.妊娠20週に左肺分画症と診断し,妊娠34週のMRIで左横隔膜ヘルニアと診断.在胎38週4日,体重2,641 g,予定帝王切開にて出生し,日齢2に経腹的横隔膜修復術を施行したが術中胸腔内に分画肺は確認できず,日齢35の造影CTで,左横隔膜上に腹腔動脈から栄養され門脈に還流する肺葉外肺分画症(extralobar pulmonary sequestrations: ELS)を認めた.無症状で経過したが,栄養動脈が太く多くの血流が分画肺にとられていることも考慮して切除の方針とし,1歳半時に胸腔鏡補助下左分画肺切除術を施行した.ELSは一般的には無症状例が多いとされる.門脈還流のELSは極めて稀で,詳細な報告は過去4例のみで,特有の症状はないが全例なんらかの感染をきたしていた.ELSは捻転,梗塞や感染リスクも踏まえて摘出が望ましく,胸腔鏡下もしくは胸腔鏡補助下切除術の良い適応である.