2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S12
Medial tibial stress syndrome(以下、MTSS)とは、運動時に脛骨後内側縁に疼痛が生じる症状で特徴づけられ、一般的にシンスプリントとして広く認知されている。疼痛部位が類似していることから、脛骨疲労骨折と混同されることが多いが、2000年代から国際論文では、「疲労骨折や虚血性由来の疾患ではない」ことがMTSSの定義に含まれるようになり、疲労骨折や慢性コンパートメント症候群とは区別された障害として研究が行われている。MTSSはスポーツ現場などでは軽視されることが多い症状であるが、下肢オーバーユース障害の中でも治療期間が長く、治癒に至っても再発が繰り返される。長期間にわたる疼痛のために手術に至る例も報告されており、軽視することができない障害である。これらのことから、早期のスポーツ復帰および再発予防を行うためには、MTSSの病態および症状発生メカニズム、適切な治療介入を理解することが重要である。
MTSS症例を対象とした組織学的研究により、骨の微細損傷や、骨膜と筋膜を含む軟部組織の炎症が認められたことから、これらの組織がMTSSの病態と考えられている。しかし、MRIや超音波画像の所見では異常所見を認めない症例も報告されており、画像評価の際には注意が必要である。また、我々は解剖学的・組織学的研究を通して、MTSSの病態解明に取り組んでおり、その成果の一部を報告する予定である。
画像上、異常所見を認めない例があることから、理学所見を中心にMTSSを診断する試みが行われ、MTSSの診断方法として有用性が示されている。理学所見の評価に加え、スポーツ動作の評価から脛骨後内側縁の骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷を推測することで、炎症状態や力学的負荷に応じたリハビリテーションの立案・実践に繋げることができる。骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷は、解剖学的知見や動作解析から推察されている。MTSSはランニング障害と考えられており、これまで多くのランニングの動作解析が行われているが、ランニングに限らず、様々な動作で症状が誘発される。そのため、本発表ではランニングだけでなくスポーツ動作を評価するための基礎情報として、これまで報告されたMTSSの運動学的特徴を整理する。また、治療介入を行った先行研究の成果を踏まえて、脛骨後内側縁の骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷について、文献的考察を行う予定である。