気管支学
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肺クララ細胞と末梢気道病変(第 11 回日本気管支学会総会特集)
木村 雄二
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1988 年 10 巻 5 号 p. 467-478

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抄録

Claraの見出した細気管支クララ細胞は, 酸素を取り入れる作業に欠かせないものであることが, 明らかになってきた。クララ細胞を取り巻く数々の呼吸器疾患の存在は, この細胞の重要性を物語っている。人肺クララ細胞の, 細気管支内ヘドーム状に突出させた細胞質は, 肝細胞のそれに非常によく似ている。細気管支が気管から25分岐するとして概算すると, 肺全体ではクララ細胞はざっと300億個になる。β-アドレナリン刺激剤, イソプロテレノール投与後30分から, 細気管支と肺胞直前のクララ細胞が著しく腫大する。寒冷刺激, ニコチン, phenobarbitalも著明なクララ細胞の腫大をきたす。酸素のターゲットにもクララ細胞はなっていた。パラコートもクララ細胞の障害をもたらす。マウスにβ-アドレナリン刺激剤を投与すると, クララ細胞は増殖し, クララ細胞の増殖している時に, 肺発癌物質である4-NQOを与えれば肺腫瘍発生が増加する。石綿肺では石綿線維の間に含まれている, 石綿微粒子が細気管支周囲に沈着する。ここにもクララ細胞は存在し, 石綿による末梢肺発癌の舞台となる。肺線維症にしばしば見られる, 細気管支から肺胞へかけての細胞増殖巣にはクララ細胞が並ぶ。びまん性汎細気管支炎, 閉塞性気管支炎, 肺胞蛋白症, 成人型呼吸促迫症候群, 新生児呼吸促迫症候群などもクララ細胞と関わりをもつ。腺癌の67%はクララ細胞型で, 人肺腺癌もクララ細胞が主役を演じている。臨床的にも他の腺癌細胞亜型と差異を見出した。クララ細胞は種々の呼吸器疾患に関与する細胞であるが, ヒトのクララ細胞の研究は殆どなされておらず, 今後に多くを期待しなければならない。

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© 1988 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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