抄録
本論文はクヌギ2年生実生苗を水耕栽培し, アルミニウム濃度とリン濃度がその成長に及ぼす相互作用について述べたものである。NH4H2PO4を(NH4)2SO4とし, リンを除去した1/5濃度Hoagland培地を用い, NaH2PO4とAl2(SO4)314~18H2Oを用いて各濃度のアルミニウムとリンを添加した。各培養液はpH 4.0に調整した。対照区は0.2 mMのリンを添加し, アルミニウムを添加せずpH 5.8とした。苗木は1994年の9月21日から11月8日までの7週間培養した。地下部の成長をみると, 0.27, 2.7および5.4 mMアルミニウム処理区のリン無添加培地では新根の発生が顕著であった。しかし, 0.27または2.7 mMアルミニウム処理区では, 高濃度(2.0 mM)のリンを添加することによってアルミニウム処理による発根促進効果が打ち消された。一方, 5.4 mMアルミニウム処理では, 高濃度(2.0 mM)のリンを添加しても根量の増大が認められた。地上部についてみると, 高濃度(5.4 mM)アルミニウム処理区ではアルミニウムによる成長阻害作用が顕著であり, リン無添加区はもとより, 対照区と同濃度の0.2 mMリンを添加しても葉の乾物重量は減少した。しかし, このような5.4 mMアルミニウムによる地上部の成長阻害は, 高濃度(2.0 mM)のリンを添加することによって打ち消された。