抄録
ニホンジカ(以下,シカ)による森林被害の都道府県域の広域モニタリング手法として,京都府において,落葉広葉樹林における下層植生衰退度(Shrub-layer decline rank ,以下,SDR)調査を実施した。併せて,人工林における被害分布を広域にモニタリングする手法の開発を目指し,京都府全域を対象にヒノキ林およびスギ林において剥皮被害(以下,剥皮)の調査を実施した。京都府内において,SDR,ヒノキ剥皮およびスギ剥皮をそれぞれ約130 カ所で調査した。得られた結果を市販のGIS ソフトに読み込み空間内挿補間を実施し,それぞれの被害の分布地図を作成した。空間内挿の精度を検討した結果,SDR,ヒノキ剥皮およびスギ剥皮の推定精度はいずれも良好であった。さらに,シカの採食圧の指標として,4 年分(2007 年度~2010 年度)のシカの目撃効率の平均値とSDR,ヒノキ剥皮およびスギ剥皮との相関解析を行った。その結果,SDR およびヒノキ剥皮はシカの目撃効率の平均値との有意な相関が確認された。本研究で実施した人工林における剥皮被害分布調査手法は,都道府県レベルの広域モニタリングに有効であると考えられた。