シカ採食圧でミヤコザサが矮小化した落葉広葉樹二次林において防鹿柵を設置し,ササ・バイオマス回復と窒素循環への影響を調査した。防鹿柵の内区と外区に,ササの被度50% 以上(被度大)と30% 以下(被度小)の調査区を設け,バイオマスおよびリターフォールを測定した。イオン交換樹脂を用いてA
0 層直下(0cm)と土壌深さ10 cm と30 cm の土壌浸透水による無機態窒素移動量を測定した。被度大では, 防鹿柵設置2 年でササ・地上部が約4,000 kg ha
-1,地下茎が約1,000 kg ha
-1 増加し,葉の窒素が40 kg ha
-1 となり葉リターの窒素も増大した。防鹿柵設置2 年目には外区の被度大でも地上部が約2,000 kg ha
-1,地下茎が約1,000 kg ha
-1 増加し,地下茎の連絡による防鹿柵外での効果が示唆された。被度小では,防鹿柵設置2 年ではササ・バイオマス,リターフォールともに著しい変化がみられなかった。また,地下茎より下層に浸透する無機態窒素の割合が被度小で被度大よりも高かった。被度小は被度大より地下茎バイオマスも著しく少ないことから,急速なミヤコザサの回復を期待するには地下茎が衰退する以前にシカ採食圧を排除する必要があるといえる。
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