抄録
奥日光千手ヶ原地域において,ニホンジカの食物資源量を評価するため,林床植物の地上部現存量を被度(C)と植物高(H)を乗じた値(C×H 値)から推定する方法を検討するとともに,既報の積算被度による推定法と比較した。2 つの調査地において,出現した植物種ごとに被度と最大自然高を測定した後に地上部を刈り取り,植物タイプ(木本,シダ,草本:シロヨメナ+キオン(キク科草本),キク科草本を除く広葉草本類,グラミノイド)にわけて乾燥重量を測定した。2 つの調査地のデータをまとめて解析したところ,植物タイプごとのC×H 積算値と地上部現存量のあいだに相関関係が認められ,決定係数は0.8309~0.9978 であった。キク科草本を除く広葉草本類において,C×H 積算値による回帰式の決定係数(0.8309)は既報の積算被度による回帰式の決定係数(0.5708)より高かった。このことから,キク科草本を除く広葉草本類においてC×H 積算値から推定する方法によって精度が向上すると示唆された。