抄録
治山事業が対象とする山腹崩壊箇所や森林整備箇所でもシカ被害が問題となっている。そのため,シカ被害対策を講じることが多いが,その効果については明らかではない場合が多い。そこで,治山事業におけるシカ被害対策の現状を把握し課題を明らかにするために,各都道府県へアンケート調査を実施した。また,対策工の中で採用例が多い侵入防止柵の変状調査を行った。アンケート調査の結果,対策には侵入防止柵が多く使用されていることが分かった。また,治山事業対象地は急峻地や奥山であることが多く,維持管理を行うことが難しい等の課題が明らかとなった。このことから,治山事業に対応した侵入防止柵の開発や維持管理面の改善が必要であることが示唆された。また,侵入防止柵の変状調査を行った結果,治山事業特有の問題である落石や土砂の堆積が原因で変状が発生していることが分かった。そして,今回の調査で比較的軽微な変状の場合は補修部材・道具類を用いずに容易に補修を行うことができることを確認した。