日本緑化工学会誌
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特集
特集「シカの採食圧による植生被害防除と回復」
ニホンジカ高密度化に対する脆弱性とRDB 掲載種からみた植物群落の保全危急性評価
大橋 春香星野 義延中山 智絵奥村 忠誠大津 千晶
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2013 年 39 巻 4 号 p. 512-520

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抄録

シカの高密度化による植生への影響は,生態系機能や他の分類群への影響より早い段階から発生しやすいため,地域スケールで植物相を保全するには,影響が軽微な段階から予防的な対策を行うことが望ましい。保全に費やせる社会的資源が有限ななかで予防的な対策を行うには,地域の植物相を維持するうえで重要な場所を特定し,その優先順位を計画に盛り込む必要がある。本研究では秩父多摩甲斐国立公園において198 地点の植生調査資料をもとに,出現種を「シカ高密度地域での減少種/その他」「RDB 掲載種/非掲載種」の組み合わせから「減少種・RDB 掲載種(A) 」「減少種・RDB 非掲載種(B)」「その他・RDB 掲載種(C)」「その他・RDB 非掲載種(D) 」に区分し,各グループの総種数に対する占有率とシカの相対密度指標の関係を検討した。グループB はシカの相対密度指標の増大とともに減少したのに対し,グループD の種は増加した。また,グループC は相対密度指標の増大に対し一山型の応答を示した。群落型ごとの比較からグループA・B の占有率が高い亜高山帯~ 山地帯の草原や広葉高茎草本型のブナ林,シオジ林の保全危急性が最も高いと考えられた。

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