野外播種試験を,ラン科植物以外に活用した例として,ツツジ科イチヤクソウ亜科が挙げられる。イチヤクソウ亜科は,ラン科植物と類似した生態を持つ菌従属栄養性の高い植物である。筆者らは,オオウメガサソウ(環境省準絶滅危惧)の国内での分布南限地である茨城県で,本種の保全を目的に,野外播種試験を試みている。播種からわずか6か月で発芽が確認され,全体の発芽率は15.5%となった。幼若個体のDNA分析により,発芽に関わる共生菌の種類も明らかになりつつある。本報告では,これまでの取り組みと今後の展望について紹介する。