日本統計学会誌
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統計データに根ざした社会的デシジョン
辻村 江太郎
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1992 年 21 巻 3 号 p. 317-321,264

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抄録
日本は世界でも有数な統計大国である.短期,中期,長期の統計資料が国民の生活全体をカバーしている.この豊富な資料を活用するには,国の経済のあり方についての哲学的判断と経済学的判断が重要である.統計では, 1987年から91年にかけて実質経済成長率が当初の政府見通しより大きくなっており,労働の需給状況についても失業率が政府見通しより小さくなっている.この統計は真実を反映しているが,それを成長率が高すぎると読むか,好ましい成長率の中で労働力が不足していると読むかは哲学的判断による.一方今回の景気上昇の中で,恐れていたインフレ・狂乱物価が統計に現れなかったのは何故か,という疑問が出されていて,経済学者が解答を出せないという局面があった.しかしよく考えてみると,それは地価の上昇が物価指数に含まれていなかったためで,表面下では大変激しい物価上昇が起きていたのである.これは経済学的判断の盲点であった.
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