日本統計学会誌
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21 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 西川 俊作, 吉村 功
    1992 年 21 巻 3 号 p. 259
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • シンポジウムのはじめに
    松田 芳郎
    1992 年 21 巻 3 号 p. 267-269
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    「情報化社会と文化における統計学の現状と未来」をめぐるシンポジウムの全体の構成と争点および,このシンポジウムの開催目的について述べている.
  • 竹内 啓
    1992 年 21 巻 3 号 p. 271-275,261
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    「統計」は先端技術社会の数値的基礎を与える.その役割を考えるときは,「統計」と「統計的データ」を区別した方がよい.統計的データは実験や調査で得られるデータで,統計的方法の解析対象である.統計的方法の役割については,タグチメソッドの有効性で例示されるような発展方向に注目しなければならない.統計は,社会集団を論量的に把握したものである.社会構造が複雑になっている現代では,統計の対象となる集団概念のダイナミックな変化にも注意しなければならない.統計は公共性を持つから,その公開と提供のサービスを怠ってはならない.統計を社会に供給する形態としては,コンパクトな要約が有効である.それと同時に,個票に含まれる情報をプライバシーを侵さない範囲でなるべく多く提供することも重要であり,そのための工夫が必要である.
  • 永山 貞則
    1992 年 21 巻 3 号 p. 277-282,261
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年の統計データの利用は,コンピュータの発達とともに,従来とは比較にならないほど多様化してきている.この統計需要の多様化に政府統計はいかに対処すべきかを,政府の収集すべきデータの範囲の問題と,集めたデータをどう提供すべきかという問題と,二つについて考える.前段の問題に関しては,政府統計の役割を国の行政目的に資するためでなく,国民の必要とする統計情報をサービスすることも政府の役割であるとはっきり位置付ける.後段の問題では,政府統計機関はready-madeの結果表だけでなく, tailor-madeの統計の作成を積極的に行うべきである.その対応として, (1)個票テープの目的外使用, (2)標本テープの提供, (3)統計作成機関による受託集計, (4)第3者機関による受託集計,の四つの方法を提案する.
  • 西平 重喜
    1992 年 21 巻 3 号 p. 283-287,262
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    日本の初めての世論調査は, 1945年の毎日新聞の「知事公選の方法について」の調査あたりからである.日本の世論調査では,政府とマスコミによる調査が多く,近年は自治体の調査が増えている.また,サンプリングがきちんとされている,経時的な変化をよく追っている,国際比較も盛んである,などの特徴がある.現在日本の世論調査には, (1)調査が正確にできなくなっている, (2)電話調査が使われ始めているが,その精度向上の研究がなされていない, (3)調査データの保存がよくない,等の問題点がある.
  • 大橋 靖雄
    1992 年 21 巻 3 号 p. 289-295,262
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    医学に関係する情報の社会的流通と医学研究倫理の関係について,三つの事例を取り上げて問題を提起する.薬物や新しい治療法の有効性を調べるには,人間を対象とする臨床試験が必要である.その場合,結果をどの時点でどのような形で公表するかが問題になる.第1の事例は,学問的成果が専門雑誌より先にマスコミに報道され混乱を起こしたフィジシァンズ・ヘルス・スタディを取り上げ,その経緯を紹介する.同じ薬物や同じ治療法に関して世界中で同様の研究が遂行されている.そして,個々の医学研究の結果には相互に矛盾するものがあり得る.そこで正しい結論を得るために総合評価(メタアナリシス)が有用であり,循環器疾患やがんの分野では新しい研究方法として多くの応用事例が公表されている.その際,肯定的な結果のみが公表されやすいという出版バイアスが問題になる.第2の事例として,出版バイアスと,それを避けるための手段でもある臨床試験の事前登録を紹介する.エイズの治療薬についての研究は,その重篤性と緊急性から,従来の研究方法・法的手続きに再検討を迫りつつある.第3の事例では,ある薬剤の認可の経緯を紹介し,主に臨床試験に関する問題提起を行う.
  • 野田 孜
    1992 年 21 巻 3 号 p. 297-300,262
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    官庁が調査している個人・家計関連の経済統計データベースは,主要経済統計の時系列からなるマクロデータベース,個々の所帯や企業の統計からなるミクロデータベース,構造把握統計の三つに大別される.構造把握統計は,個々の標本情報の秘密を保持しながら,経済主体間の格差などを把握しようとするものである.近年では,経済構造の変化と情報化の進展によって,民間統計の量が増加し,その中には第三者が利用できるものも相当数ある.今後その需要と供給が増えるであろうが,プライバシー保護との関係で,個人データ収集に関する統計法上の原則の再点検も必要になろう.
  • 宮川 公男
    1992 年 21 巻 3 号 p. 301-303,263
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    系列取引,証券投資損失補〓,欠陥製品等の問題があって,企業情報への情報開示の要求が強まっている.もちろん一般には,情報開示が望ましいが,その際には,情報の質として,正確さ,検証可能性,完結性,適時性,適切性に注意しなければならない.これらは相互に関連して,トレードオフの関係があることもある.企業情報は企業が競争上優位に立つための有力な武器であるし,それの獲得と提供にはコストもかかる.したがって公開には,法的規制,インセンティブ,社会的責任意識等について深い洞察と,社会的な合意が必要である.
  • 吉村 功
    1992 年 21 巻 3 号 p. 305-309,263
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    保健・医療情報の利用者の立場には,病気にかかる立場,病気を治す立場,医薬関連企業の立場の三つがある.本稿では,第一の,いわば市民・患者の立場からの情報公開への要求を論じている.この立場の利用者は, (ア)医療過誤, (イ)副作用被害, (ウ)公害・環境汚染の影響, (エ)インフォームドコンセント, (オ)医薬品や治療法あるいは医者の選択,についてのデータを必要としている.大きな問題点は,データの入手が困難なこと,専門的知識の関係で,データの内容が理解し難く,医者との意思疎通に問題が生じていることなどである.市民・患者は情報の提供者でもあるので,情報の提供と利用の基準について,社会としての十分な合意が必要である.
  • 辻村 江太郎
    1992 年 21 巻 3 号 p. 317-321,264
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    日本は世界でも有数な統計大国である.短期,中期,長期の統計資料が国民の生活全体をカバーしている.この豊富な資料を活用するには,国の経済のあり方についての哲学的判断と経済学的判断が重要である.統計では, 1987年から91年にかけて実質経済成長率が当初の政府見通しより大きくなっており,労働の需給状況についても失業率が政府見通しより小さくなっている.この統計は真実を反映しているが,それを成長率が高すぎると読むか,好ましい成長率の中で労働力が不足していると読むかは哲学的判断による.一方今回の景気上昇の中で,恐れていたインフレ・狂乱物価が統計に現れなかったのは何故か,という疑問が出されていて,経済学者が解答を出せないという局面があった.しかしよく考えてみると,それは地価の上昇が物価指数に含まれていなかったためで,表面下では大変激しい物価上昇が起きていたのである.これは経済学的判断の盲点であった.
  • 赤池 弘次
    1992 年 21 巻 3 号 p. 323-327,264
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    計算機は超人間的な知的能力を持つ存在ではない.計算機社会の本質は,計算機により実現される正確・高速な通信機能を利用する情報社会である.チューリングは,計算機を一定の規律による賞罰システムで訓練して特定の能力をもたせることは可能であるが,人間の知的能力を生み出すためには独創力を与えることが必要であると認識していた.われわれの統計的データ処理は,具体的な問題の解決法の劾率よい探索を目指している.これは計算機の知的な利用の一つの姿である. AICの導入によってモデル探索の論理的な障害は除去され,計算機の容量と速度の増大が,統計的データ処理の発達に有効に利用される状況が発生している.統計学が文化の中に確固たる地位をしめるようになることに期待したい.
  • 溝口 敏行
    1992 年 21 巻 3 号 p. 329-332,264
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    統計学の将来や統計のあり方を予測するには,次の4点に注目すべきである.第1は経験的アプローチと理論的アプローチのバランスである.経済予測における「理論なき計測」の失敗を克服するものとして発足した「計量経済学」も,石油危機への対応に成功したとはいえず,時系列モデルを中心として経験的アプローチの復活をもたらした.両者には相補的な役割がある.第2は実態をよく反映するデータの入手である.現実を反映していないデータをいかに精密に分析しても経済予測の精度は向上しない.第3は統計資料の精度の吟味である.これは統計環境にも依存している.第4は統計学の学際性である.他の分野の専門的な理解と共に,統計学者の経験交流も必要である.
  • 後藤 昌司, 白旗 慎吾, 垂水 共之, 馬場 康維, 安田 嘉純, 松原 義弘, 余田 明夫, 脇本 和昌
    1992 年 21 巻 3 号 p. 333-351,265
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    統計的グラフィクスは,データの記述・探索の枠を超えて,モデルの構成とあてはめ,さらには推測と決定にまで適用範囲を広げ,データの解釈の全過程で利用されるようになってきている.統計的グラフィクスの研究・開発では,その実際的活用が必須であるが,「特殊」を普遍化するよりもその「特殊」により磨きをかけることが重要である.本稿では統計的グラフィクスを研究する立場よりは,それを活用・改善し,開発する立場に重きをおき,若干の省察を試みる.最初に,データ解析における用途別諸法として,データ省察,多変量データの順序づけ,判別解析,生存時間データの解析における幾分特殊な統計的グラフィクスを概説する.統計的データ解析において,グラフィクスを用いることの利点は,定性的,定量的を問わず,多くの情報を直観的に把握できることにある.しかし,それと同時に,客観性に欠けるグラフィクスを用いると,様々な誤った解釈をするという危険もはらんでいる.データの視覚表現が,データのもつ情報を直観的に把握することを可能にし,かつ客観的な解析に耐えるようにするには,視覚表現が直観のどのような側面に訴えるかを明らかにし,それを統計量として捉えることも重要である.ここでは,統計量の視覚による解釈として,ノンパラメトリック諸法とグラフィクスとの対応について若干の考察を加える.
    統計的グラフィクスの魅力は,その方法論を研究・開発・適用を通して深耕させるか,あるいは顧客を「六方」に拡大してそれらの顧客の支援をいかに獲得するかに負うている.本稿の最後では,統計的グラフィクス・ソフトウェアの最近の動向を述べ,統計的グラッフィクスの研究・開発と顧客の創造のあり方を論じる.
  • 林 知己夫
    1992 年 21 巻 3 号 p. 353-367,266
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ここでは,意識の国際比較の方法論を中心に述べる.これを具体的にするに当たって, 35年間継続している統計的日本人の国民性研究(統計数理研究所国民性調査委員会)の考え方,方法,成果が土台となっているので,この研究にも言及する.意識の国際比較は,異なる文化圏に属する人々の考え方,感じ方の異なっている所と似ている所を明らかにすることがその根幹である.これをどのように統計的に現実化するかがわれわれの研究の中核である.このためには“調査の科学”というフィロソフィーが不可欠であることと,データをどうとり(design of data),どう分析するか(analysis of data)を深めることの重要性を説明する.そして,似た所と違った所を鎖の環のように続けて行く方法論,連鎖的比較調査分析法(CLA)を提起し,その構想を説明する.この方法論を考え出した背景,さらにこの方法を用いて国際比較を行った経緯についても論じる.
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