統計的グラフィクスは,データの記述・探索の枠を超えて,モデルの構成とあてはめ,さらには推測と決定にまで適用範囲を広げ,データの解釈の全過程で利用されるようになってきている.統計的グラフィクスの研究・開発では,その実際的活用が必須であるが,「特殊」を普遍化するよりもその「特殊」により磨きをかけることが重要である.本稿では統計的グラフィクスを研究する立場よりは,それを活用・改善し,開発する立場に重きをおき,若干の省察を試みる.最初に,データ解析における用途別諸法として,データ省察,多変量データの順序づけ,判別解析,生存時間データの解析における幾分特殊な統計的グラフィクスを概説する.統計的データ解析において,グラフィクスを用いることの利点は,定性的,定量的を問わず,多くの情報を直観的に把握できることにある.しかし,それと同時に,客観性に欠けるグラフィクスを用いると,様々な誤った解釈をするという危険もはらんでいる.データの視覚表現が,データのもつ情報を直観的に把握することを可能にし,かつ客観的な解析に耐えるようにするには,視覚表現が直観のどのような側面に訴えるかを明らかにし,それを統計量として捉えることも重要である.ここでは,統計量の視覚による解釈として,ノンパラメトリック諸法とグラフィクスとの対応について若干の考察を加える.
統計的グラフィクスの魅力は,その方法論を研究・開発・適用を通して深耕させるか,あるいは顧客を「六方」に拡大してそれらの顧客の支援をいかに獲得するかに負うている.本稿の最後では,統計的グラフィクス・ソフトウェアの最近の動向を述べ,統計的グラッフィクスの研究・開発と顧客の創造のあり方を論じる.
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