日本手外科学会雑誌
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学術集会発表論文
重度PIP 関節屈曲拘縮に対する,まず屈曲拘縮を伸展拘縮に転換し, 次に側索解離を行う二段階治療の症例報告
井上 晴太齊藤 晋正司 晃子山中 浩気
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2024 年 41 巻 3 号 p. 171-177

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抄録

PIP 関節屈曲拘縮は難治である.掌側の観血的授動術が広く行われているが,術後の再発率は高く,未だ挑戦的課題である.一方で,PIP 関節伸展拘縮については,側索解離術により比較的安定した治療成績が得られることが知られている.側索は,屈曲により背側から掌側に移動することが知られている.著者らは,術後に屈曲拘縮が再発する要因の一つとして,側索の掌側偏位による潜在的伸展機能不全を考えた.そこで,まず掌側の拘縮解除と関節牽引により伸展位を獲得し,その後,伸展位を保持して側索を背側に再配置させ,伸展拘縮の状態となった後に側索解離を行う2 段階手術を考案した.伸展制限45°以上のPIP 関節屈曲拘縮を呈する2 例4 指に本法を適応したので,その治療経過と手術成績を報告する.1 回目手術である掌側の解離術から2 回目手術である背側の側索解離までの期間は8 か月と12 か月であり,2 回目術後7 か月と術後2 年で80°と50°の伸展可動域の改善を得た.本法は,2 回目手術である側索解離までの伸展位維持期間に一旦屈曲可動域は減少するが,側索の背側移動により伸展機能が再獲得されることで,屈曲拘縮の再発を防ぐことができると考えられた.

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