2024 年 41 巻 3 号 p. 197-199
掌屈転位の大きい中手骨頚部骨折に対する治療成績を,保存療法群と手術療法群に分け,比較検討した.対象は掌屈転位30°以上の中手骨頚部骨折33 例36 指とした.受傷時の年齢,掌屈角度に有意差はなく,経過観察期間は手術療法群が有意に長かった(p=0.0118).最終経過観察時の掌屈角度は手術療法群が有意に小さく(p<0.001),中手指節(MP)関節伸展角度は手術療法群が有意に大きかった(p=0.00529).骨癒合率,合併症発生率,疼痛残存率,MP 関節屈曲角度,% total active motion(%TAM),握力健側比に有意差はなかった.本骨折の掌屈変形への代償は,MP 関節過伸展で行われるとされるが,その代償には限界があると考えられた.本骨折に対する保存療法,手術療法はともに概ね良好な治療成績であるが,本来のMP 関節の可動域を再獲得するためには,角状変形を解剖学的な状態に整復保持する必要があり,そのためには手術療法を選択することが望ましい.