2024 年 41 巻 3 号 p. 260-262
今回,著者らは手根管レベルでの正中神経内血管腫による正中神経麻痺を生じた1 例を経験したので報告する.症例は74 歳男性で,主訴は左手指のしびれと巧緻障害であった.MRI で手根管レベルの正中神経内に造影効果のある腫瘍性病変を認め,保存療法で症状が改善しないため手術を行った.駆血下で手根管を開放したが明らかな所見を認めず,駆血を解除したところ正中神経内に青色の病変が出現した.腫瘍を周囲の神経線維束から剥離し,連続する血管を焼灼して摘出した.術後,手指のしびれは軽減し,短母指外転筋の筋力も改善した.本疾患は術中でも駆血下では肉眼的に診断困難であり,体表から腫瘤が触知できず,手根管症候群の好発年齢に生じた場合には鑑別が困難となる.電気生理学的検査所見に比して神経の術中所見に乏しい場合,本症例のように駆血を解除し,神経を観察してみることが重要である.また,手根管症候群との診断のもと,十分な除圧を行ったにもかかわらず術後に症状が改善しない場合は,本疾患を念頭に置いて超音波検査やMRI による再評価を行うことも考慮する必要がある.