日本統計学会誌
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特集:経済分析と構造変化
日本におけるフィリップス曲線モデルの構造変化と将来予測の安定性について
山本 庸平
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2014 年 44 巻 1 号 p. 75-95

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抄録
本稿では,日本におけるフィリップス曲線モデルの構造変化とそれを用いたインフレ率の将来予測の安定性につき統計的分析を行った.日本のインフレ率のデータは1970年代以降2013年までに3回の平均変化を経験しており,それらの平均変化の影響を外生的なものとして扱うと,失業率あるいは産出ギャップを用いた線形フィリップス曲線の傾きの係数には有意に構造変化が認められない場合が多かった.しかしながら,人々のインフレ率に対する期待を合理的期待形成の仮定に基づいて取り込むと,フィリップス曲線モデルの係数にはより多くの場合に構造変化がみられた.また,将来においてもこのような平均変化が外生的に発生する可能性を考慮すると,例えば1982年以降のようにインフレ率やフィリップス曲線が安定していた期間のデータのみで計測したモデルを用いた将来予測の精度は,推定期間におけるモデルのあてはまりに比べて有意に悪化する所謂「予測の悪化」が起こりうることも示唆された.
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© 2014 日本統計学会
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