日本統計学会誌
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44 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著論文
  • 竹内 宏行
    2014 年44 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    退化していない確率分布が解析的特性関数を有する場合,鞍点と呼ばれる狭義単調増加関数が存在する.鞍点は期待値の近傍における振る舞いによって確率分布と一意に対応し,正規分布である場合に限り直線になるという著しい性質を持つ(竹内 (2013)).本論文では期待値の近傍における鞍点の局所凸性を曲率(sp-曲率)によって捉え,確率分布が有する情報の多くがこの凸性に含まれていることを示す.例えばsp-曲率は2次までのモーメントを伴うことにより確率分布を一意に定め,漸近正規統計量の正規分布からの乖離具合はこの曲率により極めて自然な形で評価される.sp-曲率は密度関数が存在しない場合でも,特に確率分布がパラメータに依存しない場合にも定義することが可能である.
特集:経済分析と構造変化
  • 木下 亮, 大屋 幸輔
    2014 年44 巻1 号 p. 19-40
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    時系列間の因果性の検証にはGrangerによる因果性検定など代表的な方法があるが,本稿では構造変化が因果性の大きさに,どのような変化をもたらしたかを検証する方法を提案する.Hosoya (1991)において定義された周波数領域上での因果性測度を利用し,構造変化の時点を既知とした上で,因果性の変化の程度を測り,有意な変化が生じているかどうかを検証するためのWald検定統計量を提案した.この検定統計量では各周波数における因果性の変化を検出することが可能であり,誤差修正モデルにおいても応用が可能である.検定統計量の有限標本における特性をモンテカルロ実験によって確認し,応用例として日米の株価指数を用いた実証分析を行った.
  • 高橋 慎
    2014 年44 巻1 号 p. 41-60
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    日中収益率の二乗和から計算されるRealized Volatility (RV)は,観測されないボラティリティの精度の高い推定量であるが,市場の取引制度の影響によりバイアスが生じる.Takahashi et al. (2009)は,日次収益率とRVを同時に定式化することによりRVのバイアスを補正するRealized Stochastic Volatility (RSV) モデルを提案した.RSVモデルのパラメータは時間を通じて一定であると仮定されているが,現実の市場では,好況期にはボラティリティは平均的に低く,不況期にはボラティリティが平均的に高くなることが知られている.そこで,本稿では,平滑推移関数を用いてボラティリティの平均を時変的な関数として定式化したSmooth Transition RSV (STRSV)モデルを提案し,マルコフ連鎖モンテカルロ法によるベイズ推定法を示す.日米の株価指数データを用いた実証分析の結果,STRSVモデルはボラティリティの推移を適切に捉えることができ,従来のRSVモデルと比べてデータへの適合度が高いことが示された.
  • 山崎 大輔, 黒住 英司
    2014 年44 巻1 号 p. 61-74
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    本稿では,誤差項に系列相関が存在する場合の定数項シフトの検定について考察する.先行研究により,LMタイプの検定の検出力は,誤差項に系列相関がある場合には,構造変化の度合いが大きくなるほど検出力が下がってしまうという「検出力の非単調性問題」が存在することが知られている.一方,ワルド・タイプの検定では,検出力の非単調性問題は存在しないものの,検定のサイズが大幅に歪む場合がある.先行研究ではこれらの問題を回避する方法が提案されており,本稿でも,既存の方法をさらに修正することにより,有限標本特性がより優れている検定方法を提案する.新たな手法の有限標本特性は,モンテ・カルロ実験で分析され,サイズ・検出力の両面で,既存の検定よりも優れていてることが確認された.
  • 山本 庸平
    2014 年44 巻1 号 p. 75-95
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2015/04/30
    ジャーナル フリー
    本稿では,日本におけるフィリップス曲線モデルの構造変化とそれを用いたインフレ率の将来予測の安定性につき統計的分析を行った.日本のインフレ率のデータは1970年代以降2013年までに3回の平均変化を経験しており,それらの平均変化の影響を外生的なものとして扱うと,失業率あるいは産出ギャップを用いた線形フィリップス曲線の傾きの係数には有意に構造変化が認められない場合が多かった.しかしながら,人々のインフレ率に対する期待を合理的期待形成の仮定に基づいて取り込むと,フィリップス曲線モデルの係数にはより多くの場合に構造変化がみられた.また,将来においてもこのような平均変化が外生的に発生する可能性を考慮すると,例えば1982年以降のようにインフレ率やフィリップス曲線が安定していた期間のデータのみで計測したモデルを用いた将来予測の精度は,推定期間におけるモデルのあてはまりに比べて有意に悪化する所謂「予測の悪化」が起こりうることも示唆された.
特集:共変量シフトと密度比推定
特集:マクロ経済時系列分析におけるこれまでの発展と今後の展望
日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
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