日本統計学会誌
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特集:金融リスク管理における統計的方法
Vine コピュラを用いた与信ポートフォリオの信用ストレステストモデル
川口 宗紀
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2016 年 45 巻 2 号 p. 307-328

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抄録

2007から2009年の金融危機の経験を経て, 金融機関のリスク管理におけるストレステストの重要度が高まり, 位置づけが以前よりも高くなっている. ストレステストは発生確率が低く, 損失額の大きい事象, つまり分布の裾における事象を対象としてリスク評価を行うことになる. またリスク管理においては変数間の相関関係も重要であるが, 特にストレステストの場合には分布の裾における相関関係が重要となる. そこで本稿では, 分布の裾依存関係を考慮できるようにVineコピュラを利用した信用ストレステストを目的としたモデルを提案する. そして, 与信ポートフォリオのリスク評価においてよく用いられている1ファクターマートンモデルと比較を行う. その結果, 本稿で提案するモデルは, 1ファクターマートンモデルとは異なり, 平均格付等の推移がシナリオに応じて変化することが確認できた. また, 業種の違いを捉えたことにより, 業種間でストレスのかかり方が異なっていることを確認した.

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