日本統計学会誌
Online ISSN : 2189-1478
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45 巻, 2 号
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会長就任講演
原著論文
特集:金融リスク管理における統計的方法
  • 三浦 良造, 柳澤 健太郎
    2016 年 45 巻 2 号 p. 273-305
    発行日: 2016/04/07
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    オペレーショナル・リスクの計測手法について現状をまとめる.さらに,一般化パレート分布を損失額分布の裾部分に当てはめる事が主流となっている中で,一般化パレート分布の形状パラメータ推定方法のまとめと,シミュレーション研究,及び,オペレーショナル・リスク事象に関する実データを用いた推定結果を掲載する.

  • 川口 宗紀
    2016 年 45 巻 2 号 p. 307-328
    発行日: 2016/04/07
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    2007から2009年の金融危機の経験を経て, 金融機関のリスク管理におけるストレステストの重要度が高まり, 位置づけが以前よりも高くなっている. ストレステストは発生確率が低く, 損失額の大きい事象, つまり分布の裾における事象を対象としてリスク評価を行うことになる. またリスク管理においては変数間の相関関係も重要であるが, 特にストレステストの場合には分布の裾における相関関係が重要となる. そこで本稿では, 分布の裾依存関係を考慮できるようにVineコピュラを利用した信用ストレステストを目的としたモデルを提案する. そして, 与信ポートフォリオのリスク評価においてよく用いられている1ファクターマートンモデルと比較を行う. その結果, 本稿で提案するモデルは, 1ファクターマートンモデルとは異なり, 平均格付等の推移がシナリオに応じて変化することが確認できた. また, 業種の違いを捉えたことにより, 業種間でストレスのかかり方が異なっていることを確認した.

  • 吉羽 要直
    2016 年 45 巻 2 号 p. 329-352
    発行日: 2016/04/07
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    本稿では,株式と債券を含む有価証券ポートフォリオ全体の市場リスクを算出する際に,リスクファクター間の接合関数を工夫することにより,通常の状況とストレス状況での分散効果を検証する.本邦のように,過去十数年間,金利と株価の変動に正の相関がみられる場合には,金融機関の実務で用いられている標準的な分散共分散法などの手法を用いたポートフォリオ全体の市場リスク量は,株式・債券それぞれ単体でのリスク量の和と比較して大きな分散効果を得る.しかし,2009年からの欧州債務危機で観察されたように,株価が下落するとともに金利が上昇するような状況では,分散効果は限定的になると考えられる.そこで,本稿では,金融実務に即した時系列モデルの設定の下でストレス状況におけるリスクファクターの相互依存関係を考慮した接合関数を想定する.通常時でもストレス状況を捉えられるように接合関数を工夫するほか,接合関数の推定に利用するデータの時期や地域についても工夫し,ストレス状況下での接合関数がポートフォリオの分散効果に与える影響を計測し,その留意点を整理する.

  • 小池 孝明, 南 美穂子, 白石 博
    2016 年 45 巻 2 号 p. 353-375
    発行日: 2016/04/07
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    金融機関の行う統合的リスク管理においては,市場リスクや信用リスクなどを統合した合算リスクに対する経済資本の算出が行われる.各種リスクの損失分布は相異なり,かつ複雑な関連性を持っている.このため,リスク合算においてはリスク間の関連性のモデリングが非常に重要であるが,これを十分に捉えきることは一般に容易ではない.また,リスク尺度として広く用いられるValue-at-Risk(VaR)は,経済資本の算出を行う際,リスク間の関連性の不確実性に対して頑健でないことが示唆されている(Embrechts et al. (2015)).このような理由から,リスク間の関連性の不確実性に伴う経済資本の変動を,モデルリスクとして定量的に把握することは非常に有益である.再配列アルゴリズム(Rearrangement Algorithm: RA)は,Embrechts et al. (2013)により提案された,リスク間に生じうるあらゆる関連性に対する,経済資本の上限値および下限値を近似的に算出するアルゴリズムである.しばしばRAは,各種リスク損失分布の右裾における細かな離散化を必要とする.従って,実際の統合的リスク管理モデルへ適用する際には多大な計算負荷を有する.本論文では,RAの適用を考慮し計算負荷を軽減する統合的リスク管理モデルを示した上で,実際にRAを用いた経済資本の境界値の算出例を与える.また,得られた数値結果を基に,いくつかの考察や注意点をまとめる.

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