2020 年 49 巻 2 号 p. 241-264
金融資産の対数収益率の共分散行列は,資産配分からリスク管理といった広い範囲で用いられる基本的な要素である.そこで本研究では,Brownlees et al. (2018)によって提案されたLasso型の正則化を行う高次元実現共分散推定法を用いて実証分析を行う.具体的には,まず2016年の日経平均におけるスパースな共分散逆行列を推定し,市場のネットワークを作成する.そして,ネットワークの観点から市場を分析,および各業界のネットワーク構造の比較を行う.その結果,日本の株式市場は一つの企業に依存しない,つまりスケールフリーなネットワークでないことが示された.さらにネットワーク構造は日経平均株価と対応して変動していることを確認した.