2020 年 49 巻 2 号 p. 217-240
一般に,個人のカードローン審査は,申込み時に得られる借入希望者の収入や家族状況,勤務状況などの属性情報を用いて行われ,デフォルト(貸し倒れ)に影響すると考えられる個人の行動特性が考慮されていない.そこで,本研究では,銀行口座の入出金データから個人の行動特性を分析し,個人のカードローンの審査を目的としたデフォルト評価モデルを構築することにより,その有効性を検証する.具体的には,約760万件の入出金データを用いて,手数料支払回数,預金の平均残高,ピーク残高比率など行動特性を表すと考えられる変数を生成し,デフォルトとの関連を分析した.さらに,これらの変数を用いてロジットモデルを構築し,AR値を用いてモデルの序列性能の精度を評価した.検証の結果,AR値が50%を超える水準となり,実用に耐えうるモデルであることが分かった.また,アウトオブサンプルテストやクロスバリデーションで結果の頑健性も確認された.