日本統計学会誌
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会長就任講演
隣接領域との競争と共創が促す統計学の力強い発展
樋口 知之
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2022 年 51 巻 2 号 p. 213-244

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抄録

2012年,一般物体認識の精度を競う国際コンテストILSVRC (ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge) で,他のチームがエラー率26%前後のところ,トロント大学チームが深層学習によりエラー率17%弱とダントツの認識率を示した.また,オバマ政権がビッグデータ研究開発のための戦略プラン(通称,ビッグデータイニシアティブ)を発表したのも2012年である.よって2012年は,第三次AI ブームの起点と断言できる.現在,それからまだ10年しかたっていない.特にこの数年間のデータ分析手法の著しい発展は,学生の頃から統計的データ分析を実際に携わっていた私にとって最大の衝撃である.本稿では,1980年代から統計学および周辺分野の研究に関わってきたあくまでも“私の視点”から,この40年間の統計学の発展を振り返る.前半は自伝的内容が中心であるが,今後の統計学にかかわる人材育成のヒントがもしあれば,筆者としては望外の喜びである.後半は,私がこだわってきた帰納推論と演繹推論の統合の一実現形である,データ同化および深層学習について概説する.本稿が,今後の統計学の動向を考える上で少しでも参考になることを期待してやまない.

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