2024 年 54 巻 1 号 p. 33-53
本論文は,強スパイク固有値(Strongly Spiked Eigenvalue; SSE)モデルにおける高次元統計解析について紹介する.ゲノムデータのような,非スパースな高次元データに対する統計的推測について,特に高次元共分散行列の同等性検定と2次判別分析を扱う.統計的推測において,理論的な精度保証の鍵となるものは統計量の高次元漸近正規性である.しかしながら,SSEモデルに属する高次元データに対して,一般的に高次元漸近正規性は成り立たない.高次元漸近正規性に代わる統計量の漸近分布の導出や,データの扱いに対する新たな技術が必要となる.本論文は,どのように強スパイク固有値モデルへアプローチし,高い精度を保証するのか,そのアイディアと高次元統計解析の最新の展開について解説する.