2026 年 55 巻 2 号 p. 269-291
カーネル推定法は確率密度関数や回帰関数など,未知の関数が一定の滑らかさを有するという仮定の下で,それらをノンパラメトリックに推定する方法である.それらに関する仮説を検定したり,モデルの一部をパラメトリックに特定化するセミパラメトリックモデルに拡張することも可能である.正しく特定化されたパラメトリックモデルは効率性の観点から最も良い推定結果をもたらすが,特定化が間違っていれば推定されるのは擬似真値であり,その推定結果をどのように解釈すべきか明らかではない.ノンパラメトリックな統計手法は他にもあるが,カーネル法は統計的性質を調べることが比較的簡単で,また実装も容易なため実証研究でもよく用いられる.カーネル推定法は平滑化バイアスと言われるバイアスを有していることが知られており,理論的にはともかく応用上も対応が厄介な課題である.本稿ではカーネル密度推定を例にとって,主にバイアスの評価とその対処法についてこれまでの研究を概観する.