抄録
本稿では、スポーツ社会学においてどのような社会調査が行われているのか、トライアンギュレーションの視点から検証する。2000年以降に発行された「スポーツ社会学研究」の(原著)論文74本を対象にレビューを行い、生涯スポーツの視点から、運動・スポーツ実施関連調査を踏まえ、今後のスポーツ社会学領域研究の展望を考察する。
2000年以降の「スポーツ社会学研究」の(原著)論文は、現代思想、カルチュラルスタディーズ、歴史学的な分析視点が多く、研究手法は、文献研究が43.2%(32本)で最も多く、インタビュー調査(36.5%)、ドキュメント分析(20.3%)の順であった。文献研究、ドキュメント分析、インタビュー調査等の質的調査は、2000年以降継続して用いられている。特にここ5年間は、フィールドワーク・参与観察とインタビュー調査という組み合わせが多い傾向にある。一方、質問紙調査を用いているのは、2010年の後藤論文が最後であった。
また、わが国では、運動・スポーツ実施等に関する全国的な社会調査が複数行なわれており、運動・スポーツやレジャーに関する概観図は明らかになってきている。それらの調査によって経年変化を捉えることもでき、貴重なデータである。しかし、質的調査で得られているような、表象されていない事象等を調査項目として組み込むことで、現在の生涯スポーツ実践のシステムから疎外されている人たちを見つけ出すことが可能になるかもしれない。