日本野生動物医学会誌
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特集論文
霊長類における性ホルモンおよびGnRH コントロールによる 繁殖・闘争抑制の取り組み
對馬 隆介
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2024 年 29 巻 2 号 p. 27-37

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抄録
霊長類を飼育管理する際,希少種の生息域外保全および飼育下個体群の維持のために繁殖が重要である一方,限られ た飼育スペースおよび血統管理のための繁殖制限が必要な場合が少なくない。動物園における繁殖制限の手段として, 雌雄分離や外科的な去勢・避妊が挙げられる。しかし,霊長類においては,雌雄分離飼育は専有面積の狭小化による闘 争頻度の増加や単独飼育によるストレス増加の可能性があり,また外科的手法は高侵襲的かつ非可逆的であるために, 動物福祉の観点から問題となることがある。そのため,可逆的繁殖制限法として雌に合成プロジェステロン徐放剤の投 与を行い,疑似的な妊娠状態にする方法が行われてきたが,国内でのインプラント剤の販売中止や,プロジェステロン への長期的感作により生殖器疾患を誘発する可能性もあることから,新たな方法が必要となっている。近年,欧米の動 物園・水族館を中心に性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)コントロールによる繁殖および闘争抑制の試みが進め られている。しかし霊長類のみならず,動物種ごとの用法・用量については不明な点が多い。そこで,繁殖および闘争 抑制が必要な飼育動物にGnRH ワクチンおよびGnRH 作動薬を投与し,GnRH コントロールによる繁殖および闘争抑制 効果の検証を行っている。得られた情報をもとに動物種ごとの用法用量および効果を検証するとともに,複数園館で情 報を共有して,データベース化を進めている。
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© 2024 日本野生動物医学会
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