日本野生動物医学会誌
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特集
海棲哺乳類の寄生虫研究
倉持 利明
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2000 年 5 巻 1 号 p. 27-36

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抄録
海棲哺乳類研究における寄生虫学の意義について, 寄生虫相研究, 生物指標としての寄生虫研究, 病原生物としての寄生虫という3つの柱に基づきこれまでの研究を概説した。寄生虫相研究は海棲哺乳類の寄生虫研究における基盤であり, 寄生虫を生物指標として利用する上でも重要である。世界各地から膨大な研究が蓄積されているが, 特に日本近海に生息する海棲哺乳類の寄生虫相研究は未だ不十分で, 今後ストランディング調査等を通して解明して行かなくてはならない。寄生虫を生物指標として用いることが, 水棲動物の系群構造解析などに有効なことがあり, 海棲哺乳類においても系群識別や群の棲み分けなどいくつかの研究例がある。寄生虫の生活史は宿主動物により制限されており, そのため宿主動物の生物学的特徴が寄生虫により表現されることがあるからである。しかし一方, 海洋性寄生虫においてはその生活史研究がおおいに遅れているのが現状である。海棲哺乳類のストランディングや自然死亡と寄生虫症との関係は重要である。ハクジラ類の頭蓋道に寄生する二生類などをはじめとした, いくつかの寄生虫の関与が指摘されている。
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