情報の科学と技術
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特集:大学におけるInstitutional Research
特集:「大学におけるInstitutional Research」の編集にあたって
古橋 英枝
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2018 年 68 巻 3 号 p. 85

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抄録

今月号の特集タイトルは「Institutional Researchと大学」です。

10年ほど前から日本でもInstitutional Research(大学の中にある様々な情報を活用し,教育・研究等の大学の業務の改善や意思決定の支援情報のデザイン・収集・分析・評価・活用・提供などの中核を担う)の必要性が叫ばれ,米国の事例紹介から日本での導入事例紹介まで幅広く文献が存在しています。

本特集では,改めてIRとは何か,日本におけるIRの組織・人材育成等制度面の整備状況,そして具体的に何を目的としてどのような情報収集を行っているのか取り上げることで,日本におけるIRの現状を概観することを目的としています。

東京工業大学の森雅生氏には,日本でのIR導入経緯から各国の動向,教学IRと研究IRという2大フレームについて,分かりやすく整理して解説いただきました。国立情報学研究所の船守美穂氏には,より具体的な日本におけるIR登場の文脈,及び現在学内でIRがどのように扱われているか等について包括的に解説いただいただけでなく,最後に大学図書館との関わりの可能性について考察いただきました。

このような背景を前提に,神戸大学の高田英一氏には,国立大学を中心とした実際のIR人材についての調査結果を元に,人材育成の現状と今後の課題に関して考察いただきました。さらに,東京学芸大学の岩田康之氏にはIRの考え方から派生した教員養成IRについて,「HATOプロジェクト」を事例に具体的な取り組み内容をご紹介いただき,最後に岐阜大学の利光哲哉氏には,岐阜大学で開発したIRシステムである「戦略的統合データベース」について,開発に至る経緯やシステム仕様について詳細にご紹介いただきました。

IRのためのデータ収集対象には垣根がなく,IRの取り組みは,大学をはじめとするすべての高等教育機関の関係者に関わる話題であり,今後の課題だと考えています。本特集が,こういった関係者のみなさまにとって,IRの基礎知識を改めて身につける機会になると共に,今後のIRへの関わり方について,なにかしらのヒントになれば幸いです。

(会誌編集担当委員:古橋英枝(主査),田口忠祐,南山泰之)

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