本稿では,学術書籍のオープンアクセス(OA)を中心とした流通の現状について概観する。学術論文と比較して,学術書籍のOA化は進展が遅いものの,近年,欧州を中心に政策面での後押しやビジネスモデルの多様化が進んでいる。世界におけるOA学術書籍の刊行・利用状況,学術書籍の出版にかかるコストとOA化による売り上げへの影響,政策動向,およびさまざまなOA化の手法とビジネスモデルを紹介する。また,日本の現状を踏まえ,書籍OA化の課題と今後の展望について考察する。特に人文学・社会科学分野の研究成果の流通において重要な役割を果たす学術書籍のOA化が進むことで,日本語の優れた研究成果の世界的な流通促進が期待される。