空中写真や地形図等を用いた地形判読で生じる個人差を低減するために, 遷急線・遷緩線に近似的な斜面境界を抽出することで, 数値解析による地形判読補助図の作成を試みた。そのためにまず, 航空レーザデータから作成した地形データを用いて平均傾斜および傾斜の標準偏差を算出した。次に, 代表的な地形特性を有する斜面の組合せを選定し, それらの2指標の関係に基づいて線形判別分析を行い, 斜面境界帯 (閾値) を算定した。そして, 斜面境界帯に分布する地形データの格子点を斜面境界とし, 平均傾斜および斜面方向から遷急線あるいは遷緩線に近似的な斜面境界を示す点に分類した。本手法による結果は, 複数の技術者が認定した明瞭な遷急線・遷緩線については概ね同一箇所に分布し, 現地でもその存在を確認することができた。さらに, 技術者によって判断が分かれる不明瞭な遷急線・遷緩線に対しては, 数値解析に基づく客観的な結果を与えるといえる。ただし, 斜面境界ではない不要な地形も抽出されており, その点については注意が必要であるが, 技術者が見落とす, あるいは捨象する様な遷急線・遷緩線について現地での存在を確認し, このような斜面境界の抽出漏れを防止するという意味でも, 本手法の実用性を示すことができた。