本稿では,日本の多国籍企業を対象にしたアンケート調査を用いて,財務管理の集中化と責任会計との関係について調査した.財務管理の集中化とは,多国籍企業内の子会社の資金を集中管理し,企業グループ内でのキャッシュフローの最大化を目指す国際財務管理を指す.このための手法として,本調査では,リーズ&ラグズ,マリー,ネッティング,リ・インボイスをとりあげた.財務管理の集中化は,企業グループ全体の効率を高める一方で,個々の子会社の財務指標を歪め,管理会計のひとつである責任会計に影響を与える可能性がある.そこで,多国籍企業は財務管理の集中化がもたらす影響を業績管理上どのように調和させようとしているのかについて研究した.研究にあたっては,アンケート調査を行い,これに共分散構造分析を適用してモデルを構築した.そして,このモデルに基づき3つの仮説を設定した.