管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
10 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論壇
  • 吉田 寛
    2002 年10 巻1 号 p. 3-9
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,冷戦終結後,徐々に,そして1990年代になって急速に進行した証券資本主義のグローバル化が会計と情報開示にもたらした影響を検証するなかで,会計および情報開示制度の改革について,その意味を考察することを目的とする。

    この目的設定は,会計制度の今後の発展動向を見極めるための布石である。現在の世界的な会計制度改革の根底にある思想は何か。それを知れば今後の動向も明らかになるという仮設を立てて,この問題に接近した結果得られた知見を開陳している。

論文
  • 原田 雅顕, 田中 雅康
    2002 年10 巻1 号 p. 11-25
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    製造業においては競争優位性を確保するために製品差別化戦略が採用されることが多い.そのために基本機能の改善や機能の付加がはかられる.本研究では新たに追加される製品機能を「付加機能」と呼ぶことにする.初めにこれらの付加機能に対する売価の代表値を設定する方法を提案する.そのために,まず潜在顧客のなかから選定された評価者に対して,主観的評価に基づいて評価者ごとに購入価格の金額帯を調査する.次にこれらの金額帯を線形情報統合法を適用して統合することによって評価者として選定された潜在的顧客全体の評価額の代表値を算出する.ところで,新製品開発に際して,付加機能が単独で製品に組みこまれることは少なく,複数の付加機能が同時に採用される場合が多い.このとき複数の付加機能の相互作用によって顧客に有用な新たな機能が生み出されることがしばしばある.本研究ではこれを「機能の複合効果」と呼ぶことにする.

    本研究では付加機能の複合効果に着目して,「複合効果認識率」と「複合効果額比率」という2つの評価指標を提案し,機能の複合効果の分析・評価を行う.

  • 片岡 洋人
    2002 年10 巻1 号 p. 27-38
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,製造間接費計算の伝統的方法の特性を分析し問題点を示し,ABCの登場によって①解決した問題点,②解決していない問題点,および③新たに生じた問題点を明らかにし,今後の発展の方向性を示唆することである.

    以下,研究成果の主要なものを述べる.①ABCによって解決した問題点は,厳格に因果関係に基づくコスト・ドライバーを利用することにより,操業度関連の配賦基準で複雑性のコストを配賦することから生じる製品原価の歪みを取り除いたことであろう.②ABCによっても解決していない問題点としては,部門別計算の第2次集計段階において「変動費の固定費化」が生じるような状況等を考慮していないことである.③新たに生じた問題点は,原価計算制度との関連が不明確であることである.

    今後の製造間接費計算の展開の方向性・可能性は,例えば「変動費の固定費化」等のような現実の生じる状況等を考慮して再検討してみることである.

  • 吉田 栄介
    2002 年10 巻1 号 p. 39-52
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,原価企画を支援する組織能力と,原価企画のパフォーマンスおよび設計担当エンジニアの疲弊との関係を探索することである.この目的のため4社に属する171名の設計担当エンジニアに対する郵送質問票調査を実施し,各社ごとに次の3つの分析を行った.

    第1の分析は,ツール類の理解度と有効性との間の相関分析である.その結果,概ね導入期の原価企画ツールについては正の相関関係を確認したが,その他の多くのツールにおいては同様の関係は確認されなかった.

    第2の分析では,目標原価の達成・未達事例間における組織能力の差異を調べた.続いて第3の分析は,原価企画を支援する組織能力を独立変数,原価企画の短期的パフォーマンスおよび設計担当エンジニアのバーンアウトを従属変数とする重回帰分析を行った.これら2つの分析の結果,原価企画ツールよりも組織構造および組織プロセスに関する変数の方が,原価企画のアウトプットに対する影響力が大きいことが示された.

  • 塘 誠, 浅田 孝幸
    2002 年10 巻1 号 p. 53-62
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本の多国籍企業を対象にしたアンケート調査を用いて,財務管理の集中化と責任会計との関係について調査した.財務管理の集中化とは,多国籍企業内の子会社の資金を集中管理し,企業グループ内でのキャッシュフローの最大化を目指す国際財務管理を指す.このための手法として,本調査では,リーズ&ラグズ,マリー,ネッティング,リ・インボイスをとりあげた.財務管理の集中化は,企業グループ全体の効率を高める一方で,個々の子会社の財務指標を歪め,管理会計のひとつである責任会計に影響を与える可能性がある.そこで,多国籍企業は財務管理の集中化がもたらす影響を業績管理上どのように調和させようとしているのかについて研究した.研究にあたっては,アンケート調査を行い,これに共分散構造分析を適用してモデルを構築した.そして,このモデルに基づき3つの仮説を設定した.

総合報告
  • 金田 直之
    2002 年10 巻1 号 p. 63-76
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    この論文の目的は米国会計基準(U.S.GAAP)と国際会計基準(IAS)における会計数値の違いを分析することにある。米国においても,ニューヨーク証券取引所において外国企業の国際会計基準の適用が例外として認められており,二つの会計基準による財務諸表の違いを理解することは,今後重要性を増すものと考えられる。

    本稿では統計的モデルを用いて,研究開発費の会計数字の違いを理論的に明らかにしようと試みた。定常状態企業では,2つの会計基準のもとで,同一の利益を計上する。資産については,開発費の資産化により,IASにおける数値が大きくなる。このため,総資産利益率はIASでの数値が小さくなる。一方,負債比率は同様の理由でIASにおける数値が小さくなる。また,利益の分散はIASのもとでより大きくなる。成長企業については,IASのもとで,利益はより大きく表示される一方,株価収益率はより小さくなる。

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