管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
26 巻, 2 号
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特別講演
  • 櫻井 通晴
    2018 年26 巻2 号 p. 3-17
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    本論文は,平成29年8月28日に福岡大学において報告した2017年度年次大会での特別講演の内容を,論文として発表することを目的に,加筆・修正したものである.論文として発表するに当たり,内容だけでなくタイトルもまた講演時における「契約価格,原価,利益―研究アプローチの変遷と「訓令」の批判的検討―」から,表題のように変更した.

    本稿の主目的は,防衛装備品の調達に関して,現行の「訓令」に加えて,新たにパフォーマンス基準に基づく調達基準を設けることの重要性を指摘することにある.ここでパフォーマンス基準に基づく調達基準とは,「原価を低減し,納期を早め,品質を向上し,革新的な技術を開発し,もって納税者の負担を軽減する原価,利益,価格算定の方式」のことをいう.その目的を達成するため,特別講演という性格を勘案し,まず初めに筆者の研究方法と研究対象の変遷を述べ,なぜ管理会計を専門とする筆者が防衛問題を考察するに至ったかを明らかにする.

論壇
  • 伊藤 和憲
    2018 年26 巻2 号 p. 19-29
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    経済環境の変化にしたがって,実務に有用なものとなるように管理会計が拡張している.そのようななかで,管理会計の定義や体系を再考する必要がある.まず,管理会計を拡張しなければならない変化として,経済環境,価値創造の源泉,価値観に焦点を当てる.また,拡張した管理会計として,戦略重視のBSC,非財務情報としてのインタンジブルズ・マネジメント,固定予算による管理,ステークホルダー志向の統合報告を例示する.これ以外にも,管理会計の拡張はみられる.その拡張について,統一論題の報告者にそれぞれの立場で検討していただく.併せて,管理会計の定義はどのように移行すべきか,管理会計の体系はどうすべきかについて検討する機会となることを期待している.

  • 伊藤 克容
    2018 年26 巻2 号 p. 31-46
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    生産と販売はともに企業活動にとって重要な領域である.歴史的に2つの領域を比較すると,管理会計の発達は,生産職能で顕著である.販売職能における管理会計(以下,マーケティング管理会計)の発展が遅れたのは,販売プロセスに関する情報が得られなかったためである.

    近年の環境の変化にともなって,マーケティング実務が大きな変貌を遂げている.従来のマーケティング管理会計では,予算管理や販売セグメント別の収益性分析によって,プロセスのインプットとアウトプットをコントロールすることによって,販売プロセス全体を間接的に管理するしかなかった.最近の大きな変化は,顧客動向を直接追跡できるようになったことである.本稿では,マーケティング管理会計はいかに変貌し,新たにどのような課題に直面しているかについて検討する.

  • 内山 哲彦
    2018 年26 巻2 号 p. 47-62
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    企業経営や経営管理,管理会計において人的要素が与える影響は,時代とともに大きく変化している.企業の目的を持続的な企業価値創造とする場合,経済価値,社会価値・組織価値,いずれにとっても人的要素に対する適切な管理の重要性が高まっており,このことは管理会計の研究・実践にもかかわる問題である.管理会計の研究・実践における人的要素の管理への適応に大きな役割を果たすと考えられるのが,統合報告の考え方や取り組みである.本稿では,企業価値創造における経済価値と社会価値・組織価値がともに求められ,経済価値の創造と社会価値・組織価値の創造とが結びついているという認識が強調される経済基盤を前提として,統合報告の考え方や取り組みが持つ含意や役割に着目しながら,企業の人的要素の管理と,管理会計研究・実践が持つかかわりについて検討する.

  • 篠田 朝也
    2018 年26 巻2 号 p. 63-75
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    本稿は,管理会計の拡張に伴って生じる資本予算の課題について議論したものである.本稿の主たる狙いは,資本予算実務の重要な現代的課題に関する論点整理を行うこととなる.本稿で取り扱う資本予算に関連する主たる拡張的な論点は,投資の経済性評価技法の利用の変化,NPV法のカスタマイズ,事後的な統制への注目,定性的リスクの評価,撤退基準の構築,IT投資の評価,収益見積りへの注目などである.加えて,これらの論点を整理するうえで考慮すべき,研究上の限界や視点について言及し,今後の資本予算研究において検討すべき総論的課題を提供する.

  • 伊藤 武志
    2018 年26 巻2 号 p. 77-91
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/09/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,社会に貢献する企業であるオムロン(株)グループとその経営者や従業員の実際の行動を捉え,それを実務に適用するための日本企業の一つの理想的な経営のモデルとして明らかにした.株主「中心」型モデルの企業が「高価格・適正価格」と「選択と集中」により成功している一方で,典型的なステークホルダー志向型日本企業はそれらを実施しづらいなか,同社は「ソーシャルニーズの創造」理念とその実践を通して「高価格・適正価格」と「選択と集中」を実現している.それができた理由は,同社が,創業者の時代から現社長体制まで,「人間性の尊重」理念にもとづいた分権化等の仕組みをつくり,それにより成長した人材と組織が「企業の公器性」理念に共鳴し行動するという理念・仕組み・人材成長・行動を連関・好循環を形作ってきたからである.

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