本研究の目的は,中長期的な売上高目標がコスト変動に与える影響を分析することにある.具体的には,中期経営計画最終年度の売上高目標を,経営者が抱く中長期的な売上高に対する期待の代理変数として用い,これをAnderson et al. (2003)のモデルに追加しコスト変動を分析した.分析結果は,中期経営計画が策定される事業年度の売上高が前年度の売上高より増加するか減少するかにかかわらず,当該事業年度のコスト変動が中期経営計画最終年度の売上高目標の影響を受けることを示している.本研究の発見は,先行研究が注目してきた短期的な売上高に対する経営者期待だけではなく,中長期的な売上高に対する経営者期待も,経営資源の調整に関する意思決定に影響を与えること,そして,この結果としてコスト変動が生じることを示唆している.これは,中期経営計画が企業経営に実質的な影響を与えていることを意味する.