日本経営診断学会論集
Online ISSN : 1882-4544
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使用文脈に関するマーケティング・リサーチと倫理問題—企業による使用文脈データの利用と消費者の不快感との関連性に関する実証研究—
福田 康典
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2016 年 16 巻 p. 8-14

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抄録

本研究の目的は,企業による使用文脈データの利用が消費者の知覚する不快感に及ぼす影響の実証的な考察を通じて,マーケティング・リサーチが抱える新たな倫理的問題の輪郭を描くことである。サーベイ・データに対する統計解析の結果,収集された使用文脈データがどう利用されるかによって知覚される不快感の程度が異なること,そのなかでも特にデータの第三者への譲渡は不快感を大きく増大すること,譲渡の事前告知や譲渡先企業の信頼性がそうした不快感の増大を緩和することなどが示された。IoTなどを通じて,消費者が何かを使用することが企業のデータ収集に直結するようになってきた最近の状況を考慮すると,こうした知見は,データの取り扱い方に関する健全性が企業の経営診断の項目に含まれるべきであり,それに関連した診断指標が開発される必要があるという点を示唆していると思われる。

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© 2016 日本経営診断学会
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