経営の評価軸として,利益や市場シェア,ブランド力などが採用されることが多く,それが良いと優れた経営とされてきた。このような評価軸は,たしかに現代資本主義における経営成果を測るのに有効である。しかし,それだけで経営の本質まで評価することはできない。近年,業績が良いけれども,社会的に問題のある企業が出現している。自分の報酬を過小報告して,ステークホルダーに開示していた会長は,有価証券報告虚偽記載で逮捕された。保険の不適切販売をしていた生命保険会社は,業務停止命令を受けた。このような,不誠実な経営は社会的批判の的となり,その企業の持続可能性が注目されるようになった。そのため,不誠実な経営の問題点を指摘し,誠実な経営の条件を提示することが重要である。経営診断指標としての拡大志向という側面を自己愛の強さというキーワードから顧みて,自己愛ではなく,共感意識から導き出される経営診断指標について考察することが本研究の問題意識である。