順天堂醫事雑誌
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特集 教授定年退職記念講演
日本におけるTrichophyton tonsurans 感染症の疫学とその感染対策に関する研究
比留間 政太郎
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2013 年 59 巻 3 号 p. 246-250

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抄録

ほぼ10年前より, 白癬菌の一種であるTrichophyton tonsuransが, 格闘技選手を介して日本へ持ち込まれ, 本感染症が急激に増加し大きな問題となっている. われわれは, この感染症拡大を阻止するために, 感染対策を行ってきた. 方法: 2008年-2012年の5年間にわたって, 東京学生柔道連盟加盟の一部校, 約20校の延べ6,133名の柔道選手について, ブラシ培養法を行い陽性者を調べた. 結果: 6,133名中418名 (6.0%) が陽性であった. a. ブラシ培養法で2集落以下は, ミコナゾール含有シャンプで治療し, b. 3集落以上の者は, 1) itraconazoleを100mg/日を6週間, または400mg/日を1週間内服, または2) terbinafine 125mg/日を6週間, または500mg/日を1週間投与した. この治療法で, 325名中311名 (87.1%) が, 菌が陰性化した. 陰性化しなかった者の多くは治療を中断した者であった. 考察: 今回の治療法は有効であった. しかし, 一部の者は治療を完了できなかった. この感染症を阻止するための次のステップは, 1) よりよい治療法の開発, 2) この感染症の予防と制御法のガイドラインの改良, 3) 治療を貫徹するために皮膚科専門医のネットワークづくりをすることが急務である.

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