2008 年 25 巻 4 号 p. 240-245
強拡大下で精子頭部の空胞様構造の有無を確認して顕微授精を行う手法(Intracytoplasmic Morphologically selected Sperm Injection:IMSI)により流産率の抑制が試みられている.この空胞様構造と染色体異常の関連性について明らかにするため過去の精子染色体研究とIMSIの報告を比較すると共に,オリンパス精子選別・顕微授精システム(UPlanSApo100×/1.40)を用いて空胞精子の観察と染色体アッセイを行った.その結果,IMSIによる流産率の抑制効果の中には400倍程度でも判別可能な異常精子が排除されたことによる異常胚生成リスクの低下分が包含されている可能性が高いと予想された.また,1,000倍にて選別した大型の空胞様構造を有する異常精子の染色体異常率は正常精子の場合と有意差はなく,大型の空胞様構造と精子染色体異常の関連性は認められなかった.したがって,Bartoovら1)の提唱したIMSIによる流産率の抑制効果が精子DNAフラグメンテーションと関連するとの仮説を支持しなかった.
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