2022 年 22 巻 1 号 p. 11-16
〔はじめに〕結帯動作制限を認めた症例に対するmobilization with movement(MWM)によるアプローチの即時的効果について報告する。〔症例紹介〕60歳代の女性。転落外傷により多発骨折を受傷。主訴は背部痛であり,結帯動作と肩甲上腕関節挙上時に疼痛を認めた。〔評価と治療〕肩甲上腕関節後下方組織の拘縮と結帯動作時の体幹および肩甲骨運動の逸脱した運動パターンを認め,肩甲上腕関節内旋のMWMを実施した。〔結果〕肩甲上腕関節の関節可動域と筋力には改善を認めなかったにもかかわらず,第5腰椎棘突起と母指指尖間距離(L5-TD)は5cmから19 cmとなり,顕著な即時的効果がみられた。〔結論〕胸椎レベルでの結帯動作を目標とする場合には,肩甲上腕関節内旋のMWMは有用な介入手段となる可能性がある。