抄録
都道府県保健所においては,地区医師会や在宅療養支援診療所・病院と連携しつつ,医療計画の一環として二次医療圏域単位で在宅医療の体制構築を推進して一定の成果を上げている中,厚生労働省は,2025年のあるべき医療と介護を実現するため,介護保険事業計画に創設した在宅医療介護連携推進事業について,可能な市町村は2015年度,全ての市町村は2018年度から地区医師会等と連携して実施することを決定している.
しかしながら,大半の市町村においては,当該推進事業で必要となるネットワークやノウハウをまだ蓄積しておらず,また,要介護者等の退院調整ルールについては,二次医療圏域単位で作成・運用することが効果的・効率的であることから,保健所においては,広域的又は補完的な観点から市町村を支援する役割を発揮することが求められている.
このため,市町村が当該推進事業を適切に実施できるよう支援するため,全国保健所長会の活動成果や厚生労働省地域保健総合推進事業の実践的な研究成果も活用しながら,医療介護連携の推進に対する保健所の関与について,その経緯や役割も踏まえた上で実施したアンケート調査や現地ヒアリング調査から把握した現状に考察を加えて関与のポイントや課題,更に今後の展望を提示した.