ドイツを発祥とする「予防原則」は国際法に取り入れられ,現在では各国の法制度でも援用されるようになった.しかし,因果関係が不確実な状況において対策を実行する原則であり,その適用に関しては賛否の議論が存在する.ここでは,予防原則の誕生から国際的な受容過程,類縁語である「(未然)防止原則」や「予防的アプローチ」との相違などを概観すると共に,予防原則はリスク評価体系においてリスク回避的施策の選択として位置づけられることを紹介した.さらに,予防原則の適用における課題を例示し,欧州委員会による予防原則を適用する際のガイドラインを紹介した.
次いで,地球環境リスク,とりわけ生態リスク評価における手順について,エンドポイントの採用を中心とした工夫の実態と不確実性について議論した.最後に,不確実性の高い生態リスク管理においては,対応施策を導入するには予防原則の適用が必要となるが,その合意形成には,リスク評価に頼るだけでなく,持続可能性などへの配慮も必要であることを議論した.