2018 年 67 巻 3 号 p. 268-281
国内でアスベスト問題への関心は1980年代後半から高まり,2005年のクボタ・ショックで大きな社会問題となった.クボタ・ショックを契機として,一般環境における被害者に対しても救済の道が開かれた.それでも,アスベストの危険性が認識されながら,欧米に比べて10~15年程度も使用禁止が遅れて建材などに使用され続けてきたツケは大きい.現在もアスベスト含有建材の所在が明確でない建築物が一般に多数あり,平常時及び災害時において,その解体や廃棄物対策に追われている.建築物の解体に伴うアスベストの調査や対策に関する法整備は進んできたが,その遵守が徹底されないなど,総務省の勧告によって実効性を上げる努力が求められてきた.本稿では,アスベストの基礎知識を概観した上で,アスベストによる環境リスクと規制を整理し,これからの課題を論ずる.