2019 年 68 巻 2 号 p. 126-136
多くの大規模災害の経験を踏まえて,災害医療を含む災害対応は大きく変わりつつある.
災害医療については災害対策基本法,災害救助法,医療法の複数の法令に記載されているが,災害医療の内容を一律に定めている法律はない.災害医療に関する制度の整合性を確保し,公権力を適正に行使するためにも,災害医療を一覧可能な法体系に位置づけることが求められる.
厚生労働省において災害医療コーディネーター及び都道府県保健医療調整本部のあり方など,災害時の医療提供体制に関する議論が進んでいる.
災害時であっても医療機関は機能を維持することが重要である.自院の防災力強化と併せて,地域医療,社会機能維持機関との連携強化の視点も加味した上で業務継続計画を策定する必要がある.
現在,日本の各地域においては,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供できる地域包括ケアシステムが構築されつつある.地域包括ケアシステムと災害時対応は共通点が多い.医療機関は地域包括ケアシステムの構築においても,災害時においても複数の機関との連携が求められる.
平時の地域包括ケアシステムの充実が図られている地域では,大規模災害時においても地域包括ケアシステムで構築された連携ネットワークが有効に機能し,地域住民の命,健康を守ることにつながる.復興に当たっては,平時の地域包括ケアシステムを回復することが最終目標となる.
災害対応においては国民の生命,身体及び財産を保護することが求められている.災害医療対応における課題を抽出し,問題解決を図ることが重要である.