保健医療科学
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特集
日本の健康関連研究開発の政策と制度
厚生労働科学研究費補助金を中心に
武村 真治
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2021 年 70 巻 1 号 p. 2-12

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抄録

本稿では,日本の健康関連研究開発を支える「厚生労働科学研究費補助金」の発展の経緯,現状と課題を概観し,今後の方向性を考察する.

厚生労働科学研究費補助金は,国民の保健医療,福祉,生活衛生,労働安全衛生等に関し,行政施策の科学的な推進を確保し,技術水準の向上を図ることを目的として,1951年から実施されている.2014年の健康・医療戦略の制定,2015年の日本医療研究開発機構(AMED)の設立によって,これまでの厚生労働科学研究費補助金の研究は「政策研究」と「実用化研究」に分割された.厚生労働省が所管する政策研究では,各種政策立案,基準策定等のための基礎資料や科学的根拠を得るための研究,各種政策の推進,評価に関する研究,医療分野以外の各種政策に関係する技術開発に関する研究を実施し,AMEDが所管する実用化研究では,病因・病態の解明,革新的な診断・治療法の開発を実施している.

厚生労働科学研究費補助金は,医療ICT・AI,国際保健,母子保健,がん,循環器疾患・糖尿病,難病,認知症,感染症,労働安全衛生,食品安全,レギュラトリーサイエンス,健康危機管理など,27の研究事業で構成され,2019年度は約89億円の予算で644の研究課題が実施された.各研究事業は関連する政策を担当する厚生労働省の課室によって所管され,各課室が政策立案・実施において把握した課題を解決するための研究を設定し,その成果を政策に反映させる,というMission-oriented Researchを推進している.また大臣官房厚生科学課は厚生労働科学研究費補助金の総合的企画・調整を実施し,研究課題の事前・中間・事後評価の評価基準の設定,公募要項の様式(目標,求められる成果,採択条件)の統一化など,制度の改善に取り組んでいる.

国立保健医療科学院は「厚生労働科学研究成果データベース」の運営主体として,厚生労働科学研究費補助金の研究成果をウェブ上で公開している.また健康安全・危機管理対策総合研究事業,難治性疾患政策研究事業の研究費配分機関として,研究課題の評価や進捗管理を実施している.

厚生労働科学研究費補助金はこれまで多くの研究成果を産出してきたが,今後はそれらの成果(アウトプット)によって国民の健康や福祉の水準(アウトカム)がどの程度改善したか,を評価する必要がある.

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