日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
爪白癬診療における真菌検査の実態調査
常深 祐一郎穀澤 恭一川島 眞
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2016 年 33 巻 4 号 p. 471-476

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抄録

爪白癬診断のための真菌学的検査実施の実態を把握するため,インターネットによるアンケート調査を実施した.爪白癬を診療する医師(皮膚科医,一般内科医,整形外科医)に対し,最近1ヵ月間に爪白癬の診断をつけた患者数,診断のために検査を実施した患者数と実施した検査,検査を実施した場合は検体採取者および検査実施者を問い,検査未実施の場合は実施しない理由について質問した.20床未満の施設(以下,GP)に所属する医師224名(皮膚科医117名,一般内科医56名,整形外科医51名),20床以上の施設(以下,HP)に所属する医師235名(皮膚科医112名,一般内科医55名,整形外科医68名)から回答を得た.爪白癬の診断における検査の実施率は,皮膚科医ではGP94%,HP97%と高かったが,一般内科医ではGP56%,HP71%,整形外科医ではGP51%,HP67%と検査未実施が一定割合あった.行われた検査は,いずれの診療科でも顕微鏡検査が最も多かった.検査実施の際の検体採取は,皮膚科では医師自身による検体採取がほとんどであるが,一般内科医と整形外科医共に40%程度の症例で看護師や臨床検査技師が検体採取を行っていた.顕微鏡検査は,皮膚科医ではGP,HPいずれも全例を医師が実施しているが,一般内科医・整形外科医共にGPでは検査センターなどの外部委託が約半数で,HPでは院内検査室が約7割を占めていた.検査を行わなかった患者がいる理由は,皮膚科では「視診で診断できる」「検査の陽性率が低い」「検査は時間がかかる」といった理由が上位を占め,その他の診療科では「視診で判断できる」「検査設備がない」,「検査は時間がかかる」「検査経験がない/検査方法を知らない」といった理由が上位を占めた.このように皮膚科では検査の実施率は高く,検体採取及び検査は医師自身が行っているが,一般内科や整形外科では検査は十分に実施されておらず,検体採取や検査が医師以外の医療従事者によって行われていることが明らかになった.

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