日本臨床皮膚科医会雑誌
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総説
自己免疫性水疱症の治療に際しての皮膚科医と歯科医との連携の重要性について
神部 芳則大塚 好杉村 安美若林 宣江出光 俊郎
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2018 年 35 巻 4 号 p. 622-627

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抄録

自己免疫性水疱症は口腔内にも症状を呈することが多い.特に尋常性天疱瘡では,口腔粘膜に広範囲にびらんを生じ,接触痛や出血のため,口腔内が極めて不潔になりやすい.また,治療に際しても進行した歯周病や,う蝕,不適合の義歯などがあると治療の妨げになる.ステロイド療法を開始した後も口腔カンジダ症や知覚過敏様の歯痛,さらにビスフォスフォネート製剤を併用した場合にはビスフォスフォネート関連顎骨壊死の発生リスクがあるため,専門的な口腔内の衛生管理が重要である. 症例:70歳の男性.口腔内のびらんを主訴に当院を受診した.尋常性天疱瘡の診断の下にステロイド療法が予定された.しかしながら,口腔衛生状態が不良で,進行した歯周病を認めたため,口腔衛生指導と5本の抜歯を行った.治療中も専門的口腔ケアを継続し,早期に義歯を作成し咀嚼機能を改善した.自己免疫性水疱症の治療に際して,患者のQOLに配慮したより質の高い治療を行うためには皮膚科医と歯科医の緊密な連携が必要であり,皮膚科医は歯科独特の技術的なサポートや口腔ケアのシステムを大いに活用すべきである.

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© 2018 日本臨床皮膚科医会
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