日本視能訓練士協会誌
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一般講演
Sagging eye syndromeのテレビ番組を観て来院した患者の臨床的特徴
君島 真純後関 利明蒲生 真里市邉 義章
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2023 年 53 巻 p. 35-39

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抄録

【目的】2009年Rutar and Demerは加齢に伴う眼窩プリーの変性で発症する斜視をsagging eye syndrome(SES)と報告した。本邦ではSESの疾患概念の普及がまだ進んでおらず、患者の主訴が複視であることに気が付かれず、治療に結びつかない患者が多く存在する可能性がある。2022年2月にSESのテレビ番組が放送され、SESのテレビ視聴を契機に来院した患者の臨床的特徴を検討した。

【対象および方法】対象は、2022年2~5月の間に、原因不明の複視や眼精疲労を主訴に、SESか調べて欲しいと来院した患者を診療録より分析した。

【結果】対象は50例であった。男性18例、女性32例。平均年齢は71±10歳(44-93歳)。疾患別の内訳は、SES(開散麻痺様の遠見内斜視または小角度の上下回旋斜視)27例、SES以外23例:間欠性外斜視6例、外転神経麻痺3例、他7例、斜視なし7例。86%に斜視が認められた。SESに対し、プリズム眼鏡処方17例、斜視手術3例、その他5例を行い、2例は治療を望まなかった。治療結果は、複視消失19例、症状不変3例、来院なし3例であった。

【考按】テレビ番組中の複視の映像化により自分の症状が複視に当てはまると実感し、眼科を受診する契機になったと考えられた。テレビ視聴を契機に来院した患者を分析した結果、86%が斜視であり、そのうち63%がSESと診断がつき、積極的な治療に繋がった。

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