油脂化学協会誌
Online ISSN : 1884-2011
ISSN-L : 0372-7742
魚油の乾燥性とその改善に関する研究 (第3報)
柔魚油の二塩基性酸処理
丸茂 秀雄富山 新一
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1954 年 3 巻 2 号 p. 70-73

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抄録

油脂の乾燥性がそれ自身に含まれるモノ, ジグリセリドに影響される事実については未だ知られていない。筆者は柔魚油並びに飽和酸を除去した柔魚油の乾燥性が含有されるモノ, ジグリセリドによつて低下されることを考察し, 二塩基性酸処理によつて低下の原因となる因子を解消させることに成功した。この改善効果は飽和酸wt%が9以上の場合にはなお不完全であるが, 9以下の場合は完全に発揮された。乾燥性の改善はマレイン酸のみならずフタル酸の場合にも達せられ, またマレイン化として知られる附加結合が起らないような低い温度 (150℃) におけるマレイン酸処理の際にも完全に示された。それ故この改善の機構は含有されるモノ, ジグリセリドの遊離水酸基の二塩基性酸によるエステル化であると結論される。フタル酸処理油がマレイン酸処理油に性能が若干劣るのはマレイン酸の二重結合のFunctionalityによるものであろう。
ヨウ素価の低い処理油から調製した調合白亜鉛ペイントはアマニ油を主体とする市販の一試料と較べて焼けのないこと, 艶がよいこと, 乾燥がやゝ迅いことの点で優つていた。飽和酸wt% 9以下の柔魚油の二塩基性酸処理油はペイント以外に塗料用, 電気絶縁用, 印刷インキ用の各種ワニスの用途にも供し得るが, 特に250℃のような低い重合温度での重合速度が大であること, 天然及び合成樹脂類との相溶性が大きいことが特徴である。

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