油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
牛血清アルブミンの分子内SH-S-S交換反応に対する種々のアニオン界面活性剤の阻止能力
青木 幸一郎前沢 重礼伊藤 融平松 宏一
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1981 年 30 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

牛血清アルブミン (BSA) の溶液がpH9, 65℃で加熱されると, 新成分 (1'), (2), (3), ……が生成される。ここで成分 (1') は変形されたモノマー, (2) は二量体 (3) はおそらく三量体である。成分 (1') は分子内のSH-S-S交換反応で生成され, 成分 (2), (3) は分子間のSH-S-S交換反応で生成される。もし適当量のアニオン界面活性剤をBSA溶液に加えておくと, 加熱しても成分 (1') の生成, すなわち分子内交換反応, が阻止される。ずっと以前から脂肪酸アニオンはBSAの変性を防ぐことが知られていた。今回, この原因はアニオン界面活性剤が成分 (1') の生成を阻止することにあることがわかった。
種々の界面活性剤が成分 (1') の生成を阻止できる最小量を決定した。モル混合比界面活性剤/BSAで表された最小必要量は : 硫酸テトラデシルナトリウムとパルミチン酸ナトリウムに対し5, 硫酸トリデシルナトリウムとラウリン酸ナトリウムに対し6, 硫酸ドデシルナトリウムと硫酸ウンデシルナトリウムに対して7, 硫酸デシルナトリウムに対し10, 硫酸ノニルナトリウムに対し約40, N-ラウロイル-L-グルタミン酸モノナトリウム (LS-11) に対し28であった。これらの値はこれらの界面活性剤のBSAに対する相対的親和力の便宜的な尺度である。そしてLS-11の親和力が硫酸デシルナトリウムと硫酸ノニルナトリウムの間にあることがわかった。今回のこの方法は, どのようなアニオン界面活性剤に対しても, BSAに対する相対的親和力を決めるために用いることができる。

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