油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
4つのトリアシルグリセリンの298.15Kにおけるトリクロロメタン及びベンゼンに対する無限希釈溶解熱
安部 幾生江崎 康夫草野 一仁
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1985 年 34 巻 12 号 p. 1013-1016

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抄録

4つのトリアシルグリセリン (トリグリセリド) のトリクロロメタン及びベンゼンに対する無限希釈溶解熱を298.15Kにおいて測定した。これらのトリグリセリドは, いずれの溶媒にも吸熱を伴って溶解した。溶解熱の値を, 同じ溶媒に対する液体のメチルアルカノエート及び大豆油の溶解熱と比較するために, CharbonnetとSingletonが報告したトリグリセリドの液体及び固体状態における熱容量及び融解熱の値を用いて, 298.15Kにおけるトリグリセリドの仮想的な融解熱を計算し, これに基づいて298.15Kにおける溶解熱を計算した。298.15Kにおける融解熱の計算過程において, 大きな誤差が入り込むことは避けられないが, 298.15Kにおける仮想的液体状態にあるトリグリセリドの溶解熱は, トリクロロメタンについては発熱, ベンゼンに対しては吸熱となった。
仮想的液体の溶解熱をメチルアルカノエートのそれと比較すれば, トリクロロメタンを溶媒とする場合は, 前者が約3倍 (ただしトリステアリンを除く), ベンゼン溶媒の場合は, 両者共ほぼ同じ値となる。本研究で測定した飽和トリグリセリドの溶解熱の値は, それぞれの溶媒について既報の大豆油の溶解熱ともほぼ等しいことから, トリラウリンとトリミリスチンは, トリクロロメタン中では “ひとで型” の構造を, 又ベンゼン中では3本のアルキルが並んでいる構造をとっていることがわかる。又トリステアリンについては, トリクロロメタン中への溶解熱しか測定できなかったが, この場合は溶媒中で3本のアルキルの先端部分だけがバラバラになっていて, 根本の部分は隣り合う構造を持っていると考えられる。

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